あの日、群馬の森で -追悼碑はなぜ取り壊されたのか-

あの日、群馬の森で -追悼碑はなぜ取り壊されたのか-

この国の20年の変化を追悼碑は静かに見ていたー。「群馬の森」にたたずむ追悼碑が取り壊された。それは戦時中、日本で過酷な労働を強いられた朝鮮人労働者を悼む碑だった。20年前、碑の設置を許可した群馬県はいまや碑の存在が「著しく公益に反する」という。その背景に浮かび上がったのは、負の歴史を”なかったことにしたい人々“の執拗な抗議運動だった。全国に広がる歴史修正の動き。碑はなぜ建てられ、そして取り壊されたのか。ひとつの追悼碑を通して日本社会の変化を見る。

監督:三宅美歌 日下部正樹 ©TBS

Trailer予告動画

監督:三宅美歌 日下部正樹

Comment

2015年。報道局に異動したばかりの私は、視聴者からの止まない電話に困惑していました。内容は、その日に放送した元慰安婦の証言に抗議するものでした。「裏付けはあるのか!」「一体どこの国のテレビ局だ!!」
2017年。そうした“負の歴史に抗議する人たち”の存在をはっきりと認識する現場に出くわします。東京・横網町の関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式。デマを信じて朝鮮人を虐殺した史実に日本人が向き合ってきた式典です。そこで、歴史を否定する人たちが“なかった”と主張するための集会をはじめたのです。主催団体は、全国各地にある負の歴史を刻む碑や看板を撤去しようと動いていて、着実に成果を得ていました。
群馬の森の追悼碑裁判は、日韓関係が“戦後最悪”に冷え込む真っ只中で進みました。放送までこぎつけられたのは、先輩記者たちの助言や日下部キャスターのバックアップがあったからこそだと感じます。
当時を知る世代が、後世に伝えたい・決して繰り返さない という思いで残したものを、当時を知らない世代が、無下に取り払っていいのだろうか?
この違和感が、取材の起点です。
ともに考えるきっかけになれば嬉しいです。

Profile

【三宅美歌】
岐阜県生まれ。立命館大学卒業。2011年 泉放送制作に入社。TBSテレビの生活情報番組「はなまるマーケット」などのアシスタントを経て、現在「報道特集」ディレクター。毎週のオンエアに向けてさまざまな時事ネタの取材に従事。最近はインターネット上の誹謗中傷・デマ・陰謀論の拡散に関心あり。毎年8月が近づくと終戦の日に向けた特集制作のため、アジア太平洋戦争の記憶と記録をたずね歩いている。本作が初の長編ドキュメンタリー。

【日下部正樹】
長野県生まれ 神奈川県育ち
高校時代、ディア・ハンターとして1ヶ月間ニュージーランドの山に籠る。大学時代、大島渚監督「戦場のメリークリスマス」に日本兵役として出演。デビッドボウイと差しで飲んだことが自慢。1985年TBS入社。政治部(夜回り大嫌い)、外信部内勤を経て香港、北京、ソウル支局長を歴任。2010年より「報道特集」キャスター。北朝鮮をはじめ海外取材多数。アイラ島でスコッチかけて生牡蠣を食べたことも自慢。中学の時からロックファン。ベストライブはクラッシュ厚生年金会館。

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